大規模な地震が発生すると、高層ビルを大きく揺らす「長周期地震動」が発生します。
特に大都市圏では、高層建築物が密集しており、これによって住民の傷害やエレベーターの閉じ込め事故が同時に広範囲で発生する可能性があります。
気象庁が提供する長周期地震動の緊急地震速報などを活用して、身の安全を確保することが重要です。
タワーマンションで想定されるシナリオ
それでは、都心のタワーマンションで地震に遭遇したケースを想定してシナリオを見ていきましょう。
タワーマンション40階で大きな横揺れ
Aさんと その夫Bさんは、東京都心にある40階建てのタワーマンションで2LDKの部屋に住んでいます。Aさんがリビングでテレビを見ていると、東北沖での地震が発生したとの緊急地震速報が流れます。震源地が遠く、免震構造のマンションであると考えたAさんは安心していましたが、突然の横揺れに襲われました。
家具が横滑りしテレビが落下
部屋全体が揺れ、Aさんはバランスを崩して倒れます。テーブルの脚を必死につかむものの、キャスター付きのテレビボードが滑りテレビが落下。食器棚の扉が開き、皿が飛び出して割れ、本棚も倒れそうになります。
揺れは約10分続き、Aさんは恐怖を感じ、気分が悪くなりました。夫からは、30階で働く彼の職場も大きな騒ぎになっている旨の電話がかかってきました。
エレベーターが使用不能
Aさんは幸運にもけがを負わず、夫からの情報で緊急地震速報で長周期地震動が予想されていたことを知り、家具のないスペースに避難するべきだったと後悔しました。マンションのエレベーターが3基とも停止し、食料や水が少ない中、非常用階段を使用して建物の出入りをするしかありません。夫は階段を上りながら余震が来た場合の不安を感じています。
数日後、Aさんと夫は部屋の片付けに追われ、家具の転倒防止などの対策が怠られていたことを後悔しました。
長周期地震動への備え
長周期地震動は、ゆっくりとした揺れで、大規模な地震の際に発生しやすいものです。この揺れは遠くまで伝わり、高層建築物などと共振して、建物が大きく揺れることがあります。
気象庁は、揺れの大きさを4つの「階級」で分類しており、「階級4」は最も深刻な段階で、建物の大半が移動し、けがや火災の原因となる可能性があります。高層建築物では特に注意が必要です。
気象庁は階級3以上が予想される地域に対して緊急地震速報を発表しており、テレビで表示される場合は通常の揺れと区別せずに表示されます。表示されたら、長周期地震動も考慮して行動する必要があります。
3大都市圏では、長周期地震動を増幅させる軟らかい地盤の平野部に高層建築物が多く建設されており、震源地から遠くても影響を受ける可能性があります。
東日本の長周期地震動
長周期地震動は東日本大震災でも発生しており、3大都市圏ではその際よりも大きな揺れが発生する可能性があると指摘されています。建物が免震・制震でも安心できないため、揺れが大きくなる前に安全確保の行動を迅速にとることが重要です。
速報があった場合の身を守るポイント
マンションのエレベーターの中にいるのなら、すぐに最寄り階でエレベーターから降りることが大切です。停電になると長時間の間 真っ暗な中で救助を待つことになります。
エレベーターが故障すると高層階では上り下りが大変なため普段から食料などの備蓄を心がける。防災訓練などを通じて住民同士が備蓄や生活支援で協力し合える関係作りも大切だ。
一般住宅の中にいるのなら、低い姿勢で窓や倒れそうな家具から離れ、頑丈なテーブルの下に移動するのが最初の行動です。